【業界を知る】海運業界の救世主⁈「アンモニア船」について解説!
皆さん、こんにちは!
運営担当スタッフです。
海運業界の国内最大手の日本郵船が、燃やしても二酸化炭素を排出しないアンモニアを燃料に使う「アンモニア船」の建造を決定しました。
2026年11月の完成を目指しています。
アンモニアは舶用の脱炭素燃料候補の本命の一つです。
今回は、「アンモニア船」の建造が決定された背景や意義、課題について解説します。
背景
2020年10月、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする目標を掲げました。
国際海運全体からの二酸化炭素(CO2)排出量は世界全体の約2.1%(2018年時点)を占めており、世界経済の成長を背景とした海上輸送需要の増加により、さらに増えることが見込まれています。
このため、政府は2021年10月に「国際海運2050年カーボンニュートラル」を目指すことを発表し、国際海運における脱炭素に取り組んでいます。
海上輸送のカーボンニュートラル実現には、既存燃料の重油から、水素・アンモニアといった燃料への転換が必須であり、それらを燃料とするエンジンをはじめとした舶用製品の開発が必要とされています。
その中でもアンモニアは本命中の本命だと言われています。
「舶用燃料は大量に生産する必要がある。アンモニアが大量生産に一番ふさわしい」と日本郵船の曽我社長。
供給網を構築するため、日本郵船はアンモニアの生産に関わる可能性も否定していません。
日本郵船は今後、2033年までに合計15隻のアンモニア燃料船の完成を目指しています。
同社の曽我社長は「アンモニア海上輸送の主たる担い手となりたい。」と意気込んでいます。
アンモニア船開発の三つの意義
一つ目は外航海運の脱炭素化です。
同船は重油に高い比率でアンモニアを混焼させ、従来比80%以上の温室効果ガス排出量の削減を目標としています。
二つ目は環境負荷の低いアンモニア供給網の構築です。
現在は肥料などの化学原料として使われているアンモニアですが、今後は火力発電などの温室効果ガス排出量を削減するために混焼利用されます。
内需は30年に300万トン、50年に3000万トンへ急拡大するとの試算があります。
燃料用アンモニアは、再生可能エネルギー由来の水素を大量に得られる海外で生産されるため、海上輸送の需要は大きくなっています。
三つ目は船舶でのアンモニア利用に関する国際ルール化です。
世界で脱炭素化が進む中、日本郵船が開発するアンモニア船が今後の脱炭素燃料船のモデルになれば、関連産業へ大きな波及効果があります。
それを得るためにも、今回の船舶開発を通じて蓄積した知見をもとに、日本主導の国際ルール化を目指しています。
毒性があるアンモニア燃料の取り扱いは最大の懸念でしたが、「安全性が社会実装に足る水準に達した」(日本郵船の曽我社長)ことで、建造が決定しました。
課題
アンモニアは、燃焼時にCO 2 を排出しないゼロエミッション燃料である一方、難燃性や腐食性、毒性を持っているというデメリットがあります。
そのため、船への供給や港湾への輸送体制づくりが課題となっています。
特に、安全性を確保して社会的な認知を得ることが重要です。
また、アンモニアの市場価格は原油価格に影響されているため、技術開発によってコストを下げる必要があります。
最後に
大型船舶の長距離航行に必要なエネルギーを効率良く供給できるアンモニアは、世界の海運業の脱炭素化において重要な役割を果たす可能性があります。
アンモニア船が今後の海運業界を大きく変えるかもしれませんね!
日本の海事産業の復権かける…「アンモニア燃料船」開発、四つの意義|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 (newswitch.jp)
日本郵船、世界初のアンモニア燃料商用船 7月に就航 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
世界初、実船に搭載予定のエンジン実機を用いたアンモニア混焼試験を開始 | ニュース | NEDO
MIT Tech Review: 海運業の脱炭素化で「アンモニア」が注目される理由 (technologyreview.jp)